親知らずの正しい知識
抜くなら早いうち!炎症痛み歯周病の原因
奥歯が痛い。歯茎がはれてきた。親知らずが暴れ始めたみたいだ・・・。 食べ物をすりつぶす役目を持つ大臼歯は第一、第二、第三の三種があり、上下左右に合計十二本あります。このうち最も奥にある第三大臼歯の四本は十六歳から二十歳ごろ、もう親に知られることなく生え始めるところから「親知らず」の呼び名が付いたとされています。この歯を、日本人の四人に三人は抜かなければならないという歯医者さんもいます。痛くなくても「抜きます」といわれる場合や、生えたことも気づかないまま「痛みは親知らずが原因」といわれる場合もあります。なんで親知らずは困りものなのでしょうか?
正常な親知らず
正常に咬み合っている場合は抜く必要はありません。
また、もぐっていても位置・向きともに正常に生える可能性のある歯やもぐったままでおとなしくしている歯も抜く必要はありません。(Fig1,2)
また、もぐっていても位置・向きともに正常に生える可能性のある歯やもぐったままでおとなしくしている歯も抜く必要はありません。(Fig1,2)
Fig1:正常な親知らず
Fig2:もぐったままでおとなしい親知らず
抜く必要のある親知らずとその理由
- 1.
- 奥にある親知らずは歯ブラシが届きにくく、虫歯となる可能性が高くなります。(Fig3)
特にちょっと頭を出している下あごの親知らずは炎症をしばしば起こします。「親知らずが痛い」というのはこの智歯周囲炎です。あごの周りの組織は炎症が広がりやすく、ひどくなると入院治療が必要になることもあります。(Fig4,5) - 2.
- 親知らずは隣の歯を圧迫して歯根を傷めやすく、隣の歯まで虫歯にしてしまいます。(Fig6)
- 3.
- 下あごの親知らずが炎症を繰り返すと骨の吸収が起こり歯周病になります。(Fig7)
- 4.
- 上あごの親知らずが伸び、下あごの正常な歯に当たって骨の吸収が始まり、歯周病になります。(Fig8)
- 5.
- 親知らずの位置・方向が正常でもかみ合せる歯がないと、あごの関節に負担をかけたり、伸びすぎてほおや歯茎の肉に傷をつけたりします。(Fig9)
- 6.
- 親知らずが横に生えていると手前の歯を押して、歯並びを悪くします。(Fig10)
このように親知らずが原因で周辺組織に影響を与えるようなら抜かなければなりません。
Fig3:親知らずが虫歯になる
Fig4:歯肉が腫れる
Fig5:プラークがたまりやすくなる
Fig6:親知らずの手前が虫歯になる
Fig7:骨の吸収が始まり歯周病になる
Fig8:骨の吸収が始まり歯周病になる
Fig9:上の親知らず歯が伸び下の歯茎を噛んでしまう
Fig10:歯が前に倒され歯並びが悪くなる
親知らずがあって良かった場合
ほかの臼歯が虫歯で抜かなければいけない場合、その抜いた抜歯跡に親知らずを移植できます(自家移植)。ただしすべてが使えるわけではありません。(Fig12-1,2,3)
Fig12-1:臼歯の虫歯を抜く
Fig12-2:親知らずを移植する
Fig12-3:親知らず移植完了
親知らずを抜く時期
「痛いから一刻も早く」というのは間違いです。炎症が燃え盛っているときに抜いたら、ますますひどくなってしまう恐れがあります。抜くのは抗生物質などで炎症を抑えてからです。
若いうちが良い
- ・
- 親知らずの根がしっかりすると抜きにくい
- ・
- 傷の回復力は若い方が強い
- ・
- 隣の歯に影響がないうち
- ・
- 手術で支障を起こしやすい高血圧、糖尿病などの持病がないうち
抜くことが難しい親知らず
親知らずが上顎洞に突き抜けたり、下歯槽神経に接触している場合。(Fig13)
Fig13:抜くことが難しい親知らず
親知らずは炎症、虫歯、歯周病等の原因になりやすく、痛みが激しくなる前のできるだけ早い時期に抜くことが望ましいため、一度お近くの歯科医院を受診してください。