妊産婦の歯科治療
妊娠中の口腔症状と胎児への影響
妊娠中の身体にはいろいろな変化があります。口の中の変化としては、虫歯や歯周病が進行します。また、妊娠特有の口の中の病気も時々発生します。それでは妊娠中に歯が痛くなったらどうしたらよいのでしょうか?
歯科医院受診は可能なのでしょうか?
妊婦の歯科医院受診時の注意点、妊娠時特有の口の中の状態、虫歯や歯周病が悪化する原因、それを放置することによる胎児の影響について解説します。
歯科医院受診は可能なのでしょうか?
妊婦の歯科医院受診時の注意点、妊娠時特有の口の中の状態、虫歯や歯周病が悪化する原因、それを放置することによる胎児の影響について解説します。
受診時期
妊娠のどの時期であっても、通常の歯科治療は可能であるとされています。胎児や妊婦への影響から考えて、比較的安定している妊娠中期(5〜7カ月)が望ましいとされています。
歯科処置による胎児の影響
X線写真撮影
X線写真撮影による胎児への放射線の影響は、ほとんどないといってよいでしょう。私たちが地球上(日本)で1年間の浴びる自然放射線量はおよそ2.3mSVです。この放射線量でデンタルフィルム(詳しく歯1本を撮影するための小さなフィルム)は150枚以上、パノラマ(お口全体を撮影するための大きなフィルム)では100枚撮影できることになります。
さらに、歯科用X線写真による生殖器への被爆量は、デンタル1枚で0.008mSV、パノラマではほとんどゼロといわれています。ですからX線防護エプロンを着用すればさらに安全で、妊娠中でも問題なく撮影できます。
しかし患者さん本人の気持ちも歯医者さんに、伝えてください。安全といえどもどうしても撮影が嫌な場合は、同意する必要はありません。
さらに、歯科用X線写真による生殖器への被爆量は、デンタル1枚で0.008mSV、パノラマではほとんどゼロといわれています。ですからX線防護エプロンを着用すればさらに安全で、妊娠中でも問題なく撮影できます。
しかし患者さん本人の気持ちも歯医者さんに、伝えてください。安全といえどもどうしても撮影が嫌な場合は、同意する必要はありません。
服薬
妊娠中の服薬に関しては、必ずしもすべてがだめというわけではなく、可能な投薬もあります。自分の主治医である歯科医と産婦人科医と相談の上、症状に応じた最良の投薬方法を選択してください。
局所麻酔
通常、歯科で用いられる局所麻酔剤のキシロカインは問題ありません。むしろ症状の痛みのストレスや治療の痛みによるストレスの方が母体や胎児にとって問題となります。しっかりと治療を受けて痛みをとってもらうことは大切です。その治療により投薬も最小限あるいは投薬なしで済む場合もあります。
妊娠中における口腔症状
虫歯 / 歯肉炎
妊娠中に虫歯や歯肉炎の発生が認められます。その原因として、口腔内の環境の変化が考えられます。たとえば、食事が不規則となり、プラークコントロールがうまくいかないこと、唾液pHの酸性変化、つわりなどです。歯肉炎に関しては、妊娠前より存在したものが増悪したもので、妊娠特有なものではありません。
口内炎 / 口角びらん
ビタミンやミネラルなどの不足により、口内炎や口唇の端のただれができやすくなります。予防のため栄養バランスのよい食生活を心がけましょう。
妊娠性エプーリス
歯肉にできる球形あるいは円形の良性のできもののことです。ほとんどの場合は出産後に自然に消えます。治らないときは歯科を受診してください。
歯周病
虫歯や歯肉炎と同様の原因により歯周病が悪化することがあります。歯周病の炎症で出現するプロスタグランジン(PGE2、子宮の収縮などにかかわる生理活性物質)などの物質が胎盤に影響するため、赤ちゃんが小さく産まれたり、早産になったりするリスクが高まるとも言われています。
歯周病にかかっている妊婦さんはそうでない妊婦に比べて、切迫早産や早産が10倍おこりやすいことが、これまでの研究から報告されています。
歯周病にかかっている妊婦さんはそうでない妊婦に比べて、切迫早産や早産が10倍おこりやすいことが、これまでの研究から報告されています。
歯周病の悪化により影響が及ぶ疾病
歯周治療が早産・低体重児出産に及ぼす効果
文献
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- 丸山文孝:妊産婦の歯科治療. デンタルハイジーン、24(4):331-333、2004
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- 渡辺裕三・田辺晴康:妊婦と歯科治療.歯界展望、80(1)、1992
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- 千葉県健康福祉部健康づくり支援課 千葉県歯科医師会 地域保健医療委員会:母親になる方へ 〜歯科からのご提案〜 2009