子どもの口の中の病気
お母さんのための病気の知識
子どもの口の中の病気は虫歯だけではありません。生まれたばかりの赤ちゃんの口の中にも病気がみられることがあります。そして子どもの歯肉や口の中の粘膜、舌や唇にも病気がみられることがあります。さらにそれが全身の病気の最初のサインであったり、子どもの口の中は大変重要な診断部位となります。その子どもの歯肉や舌、口の中の粘膜の病気について解説します。医療機関を受診する際の参考としてください。
乳児期
上皮真珠(じょうひしんじゅ)
生まれて間もない歯の生える前の赤ちゃんにみられます。歯肉や口蓋に、小さい白い球形のかたまりが1個から数個みられ、真珠に似ていることから、上皮真珠とよばれています。中身は白いクリーム状の柔らかいものです。これは歯をつくる組織が残ってできたものや、小さな唾液腺からできるものがあります。ほとんどは歯が生えてくれば消失します。まれに長く残って感染源となる場合もあります。
図1:つぶれる前の上皮真珠
図2:口蓋の上皮真珠
先天歯(せんてんし)
生まれたときすでに歯が生えていることが、まれにあります。このような歯を先天歯とよびます。ほとんどは下の真ん中の歯です。特に問題がなければ、そのままで様子をみます。
図3:横に倒れて生えている先天歯
舌の潰瘍(かいよう)リガ・フェーデ病
赤ちゃんがおっぱいを飲んでいるときには、舌は下あごの歯ぐきの上にのっています。先天歯や早期に生えた乳歯によって、おっぱいを飲むたびに歯の先端で舌の裏側がこすられると潰瘍ができることがあります。この潰瘍の痛みでおっぱいを飲まなかったりするときは、その歯を丸くして刺激を取り除きます。
図4:先天歯と舌の潰瘍
幼児期
粘液嚢胞(ねんえきのうほう)
口の中は、唾液が分泌されていつもぬれています。おたふくかぜになると腫れるのは大唾液腺の耳下腺です。そのほかにも口唇や口蓋、舌の裏や舌の下、頬粘膜などに小唾液腺とよばれる唾液を分泌している組織がたくさんあります。この部分を噛んだりすると、つばが出るところが詰まって袋のように、ふくらんできます。これを粘液嚢胞といい、下口唇によくみられます。表面はうすい粘膜でおおわれ透明感があります。さわると柔らかく、傷つくと簡単につぶれますが、再発することがあります。よく再発したり消えない場合には、手術して取り除きます。
図5:下唇の内側にできた粘液嚢胞
図6:舌の裏側にできた粘液嚢胞
上唇小帯(じょうしんしょうたい)付着異常
上唇小帯は、上唇を引き上げたときに、唇の裏側と前歯の歯ぐきの間についている粘膜のひだの部分をいいます。生まれたての赤ちゃんでは比較的太く厚みがあり、乳歯の生えてくる部位の近くに付いていますが、発育につれて次第に細く薄くなり、付く位置も歯から離れていくといわれています。赤ちゃんの間は様子をみてよいでしょう。歯みがきの時、前歯がくちびるにおおわれてみがきにくいので、ていねいに注意してみがくようにします。
永久歯に生えかわっても前歯の裏側まで延びている場合は切り取る手術をします。
永久歯に生えかわっても前歯の裏側まで延びている場合は切り取る手術をします。
図7:上唇小帯の付着異常
生後10ヶ月
生後10ヶ月
図8:上唇小帯の付着異常
1歳3ヶ月
1歳3ヶ月
図9:歯から離れた正常な上唇小帯
2歳6ヶ月
2歳6ヶ月
舌小帯強直症(ぜつしょうたいきょうちょくしょう)
舌小帯は、舌を上に持ち上げた時に舌の裏側についている粘膜のひだの部分をいいます。これが舌の先端についていたり肥大していると、舌の動きが悪くなり哺乳、食事、発音がうまくできなかったりします。症状としては舌を前に出した時に舌の形がハート型になったり、上の前歯を舌が触れないなどです。この障害が強い場合は舌を伸ばす手術をします。哺乳障害を伴うほどであれば可及的早期に行いますが、通常手術に協力的になる4〜5歳まで待ちます。
図10:短縮し肥大した舌小帯
図11:短縮した舌小帯により前突不能な状態
口唇(こうしん)ヘルペス
ヘルペス・ウイルスの感染によって起こる病気で、唇の一部に小さな水泡ができます。唇は腫れて痛くなります。治療は抗生物質の軟膏を塗ることと、抗生物質の全身投与を行います。
図12:口唇ヘルペス
ヘルペス性歯肉口内炎
初感染の場合、歯肉も侵されることから、急性あるいは一次性ヘルペス性歯肉口内炎とも呼ばれ、6歳以下の小児に好発します。成人での多くは再感染と考えられ、歯肉に病変がみられないことからヘルペス性口内炎と呼ばれ、再発性です。
約1週間の潜伏期ののち、39〜40℃の発熱、食欲不振、全身倦怠感などの症状で始まり、リンパ節が腫れます。それに前後して激しい歯肉炎と多数の小アフタ(小さくて丸い白色の潰瘍)ができます。アフタは痛みがあるため、幼児は食事を嫌がります。
安静を保ち必要なら経管栄養、輸液を行います。二次感染の予防として抗生物質の投与を行います。だいたい10日前後で治癒しますが、まれに髄膜炎を発症することがあります。
約1週間の潜伏期ののち、39〜40℃の発熱、食欲不振、全身倦怠感などの症状で始まり、リンパ節が腫れます。それに前後して激しい歯肉炎と多数の小アフタ(小さくて丸い白色の潰瘍)ができます。アフタは痛みがあるため、幼児は食事を嫌がります。
安静を保ち必要なら経管栄養、輸液を行います。二次感染の予防として抗生物質の投与を行います。だいたい10日前後で治癒しますが、まれに髄膜炎を発症することがあります。
図13:ヘルペス性歯肉口内炎
図14:歯ぐきと舌の白い部分がアフタです
麻疹(はしか)
麻疹の口の中の症状は、頬粘膜に苔状の小さな白斑の密集がみられます。その周囲に赤みもみられます。いわゆるこれがKoplick斑です。すみやかに医療機関を受診してください。
図15:麻疹による小さな白斑(Koplik斑)
川崎病
舌がイチゴのように赤くぶつぶつしてきます。いわゆる苺状舌がみられます。すみやかに医療機関を受診してください。
手足口病
口の中の粘膜に小水疱がみられ、手や足、顔などにも水疱がみられます。多少の発熱、食欲不振などの全身症状の発現を伴います。すみやかに医療機関を受診してください。
図16:手足口病による足の水疱
図17:手足口病による舌下部のアフタ
画像提供
- 図 1〜5,7〜9,12〜14
- 子どものための歯と口の健康づくり / 医歯薬出版株式会社
- 図 6,10,11,15〜17
- 口腔外科の臨床 / 医歯薬出版株式会社