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「私は歯医者さんでインプラント治療を行い、口の中にインプラントの金属が入っています。今度、人間ドックで脳のMRIを撮影します。噂ではインプラントが入っている人はMRIは撮れないと聞いたことがあります。インプラント治療を行っている人はMRI検査ができないのでしょうか?」
今回はMRIとインプラントが相互に及ぼす影響と安全性について解説します。
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CT検査と同じように寝た状態でドーナッツ状の装置の中で撮影します。CTは放射線を使用しますが、MRIは磁石の力を利用して撮影します。そのため放射線被曝がありません。
画像はCT画像と似ていますが、MRIは軟骨や靱帯などCTではわからない部位の撮影ができます。このように優れた画像診断装置であるため現在、多くの病院で普及されています。
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MRIには撮影室に持ち込む安全性を示す分類があります。プラスチックなどは「MR safe」の分類で安全とされて、鉄製品は「MR unsafe」で安全ではありません。歯科インプラントは「MR conditional」とされ、条件付きで撮影可能という分類です。写真はMRI装置に掃除器具や酸素ボンベが吸着してしまった事故です。(写真1,2) |
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写真1 MRI装置に清掃器材が吸着した事例 |
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写真2 MRI装置にボンベが吸着した事例 |
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MRIもCTも金属のある周囲の画像が乱れます。これをアーチファクトとい います。CTでは金属周囲が光った白い画像となり、MRIでは黒く抜けた画像となります。その結果、読影困難となるのです。
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「MRIの磁場(磁力)が金属を引きつける力(吸引力)」
インプラント体の金属は現在ほとんどが純チタンやチタン合金で、非磁性体です。実験データで吸引力はほとんどかからないと報告されています。しかしインプラントにマグネットキーパーを装着している場合は吸引力がかかりますが、脱落や磁力の低下は起こらなかったとされています。
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MRIは磁界を発生させて撮影するため、磁界が人体に照射されると人体に渦電流が誘起されます。それに伴い熱も発生します。金属は高い電気伝導度のためこの渦電流の集中が懸念されます。それによる熱傷やインプラントと骨との結合障害の可能性が考えられます。
そのため安全性を確認するための実験が行われています。その結果、温度上昇は最高でも0.5℃で、熱傷はなくインプラントと骨との結合障害もないと報告されています。
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以上のようにMRIとインプラントは相互に影響が起こります。アーチファクトは、検査上の安全性に問題はありませんが、確実な診断には問題が残ります。これにはMRIの改良進歩と金属の改良が必要です。
そして吸引力と発熱に関してですが、実験データからも問題はありません、しかしMRIからは「conditional」(条件付きで撮影可)とされています。そのため病院の方針としてインプラントを入れている方は撮影不可としている施設もあるようです。インプラントを入れているがために有益なMRI検査を受けられず手遅れになってはしまってはいけません。
このことから歯科医院でインプラント治療を受けられた方でこれからMRI検査を受けられる場合、必ず担当歯科医(歯科インプラント治療担当医)から自分のインプラントに関する情報提供書を書いてもらうことが大切です。
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画像提供
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折祖研太,小林琢也:超高磁場MRI装置における歯科用金属の安全性とアーチファクトに対する影響.岩医大歯誌2015;40:38-50. |
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山本徹:MRIにおける金属インプラント材料の影響 検査安全性およびアーチファクトー.日磁歯誌2014;23(1):1-11. |
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石上友彦:磁性アタッチメントの履歴と指針.日補綴会誌2014;6(4):343-350. |
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村中博幸,坂野康昌,中村修:MRI検査のリスクと安全性.医療保健学研究2014;5:1-13. |
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