ひょっとして口腔がんでは!?
舌乳頭と骨隆起
「口の中をよく見てみたら何か変なものがある。がんではありませんか?」
と正常組織や治療を必要としない疾患をがんとよく間違えて来院される患者さんがいます。
今回はちょっと心配でも大丈夫について説明します。
と正常組織や治療を必要としない疾患をがんとよく間違えて来院される患者さんがいます。
今回はちょっと心配でも大丈夫について説明します。
舌癌と間違える舌の正常組織(舌乳頭)
舌面には、無数の小さな突起が突出してざらざらしています。これを舌乳頭と呼びます。その個々の形から、糸状乳頭、葉状乳頭、茸状乳頭、有郭乳頭に分けられます。この中でよくがんと間違えるのが葉状乳頭と有郭乳頭です。
舌上面の各部を示す図
葉状乳頭
舌癌の好発部位は舌の側面です。そのため葉状乳頭はちょうどその部位の近くに位置しているために、それをがんと見間違える事が多くなる理由と思われます。正常組織は必ず左右対称にあります。舌の両側面にがんが発生することはありません。
葉状乳頭
有郭乳頭
有郭乳頭は乳頭の中でも一番大きな形をして突出しています。そのため腫瘍と間違うのではないかと思われます。これも左右対称に並んでいるため正常組織です。
有郭乳頭
これらの乳頭には味蕾という味覚を感知する細胞があり、大切な組織です。
歯肉癌と間違える歯槽骨の疾患(骨隆起)
1. 口蓋隆起
上あごの真ん中に硬い隆起物がよくある方がいます。成人の20〜25%にみられ女性の方が男性の2倍発生しています。また思春期に膨隆し、20歳代後半から30歳代までに最大の大きさとなります。がんではありません。
口蓋隆起
2. 下顎隆起
下あごの舌側の犬歯から小臼歯のあたりの歯肉に硬い隆起物がある方がいます。成人の5〜10%にみられ左右同じようにできます。がんではありません。
下顎隆起
歯槽隆起
上あごの頬側臼歯部歯肉に硬い隆起物がある方がいます。口蓋隆起や下顎隆起ほど多くは発生しません。これも、がんではありません。
歯槽隆起
原因
噛む力が強い方や歯軋りをする方によくできると言われています。
徐々に骨が増生する疾患です。
徐々に骨が増生する疾患です。
治療
この骨隆起が義歯を作るときの妨げるになる場合に除去します。またどうしても気になって仕方ないという方には除去することもあります。
もし口の中で気になることがあるようなら、必ず歯科・口腔外科を受診してください。このような正常組織や治療を必要としない疾患も含めて詳しい説明を受けられると思います。
画像提供
- 舌上面の各部を示す図
- 図説 口腔解剖学 5 内臓学 / アナトーム社